柔道整復師のための病院(医師)への依頼状・紹介状の書き方

こんにちは、整骨院自費導入アカデミー改め、整骨院自費成功アカデミー主宰の松村です。

最近、若い先生から多い質問が

「骨折とかの疑いがあるから病院に診察お願いしたいんですけど依頼状や紹介状ってどうやって書くんですか?」

というもの。

 

僕が修業してた頃って、まだ外傷もそこそこ来てたので依頼状や紹介状の書き方って修業先の院で教えてもらえたのですが、今はあまり教えてもらえないようですね。

「一般的な手紙のマナー」が通用しないのが医療業界。
医療業界では、医師は王です。
ですので、「王にお手紙を出すなんて本当に畏れ多いのですが、もし王が少しでも時間があるならそのときでいいし、王の従者が代わりに読むだけでも、お手紙来たでってわかっていただけただけでも本当にありがたいんでお願いします」という風にするのがマナーです。

ホンマかいな?
そう思われるかもしれませんが、超ホントです。

ただ、最近はそういうのも崩れてきているかもしれません。
というのも、もう8年くらい前になるのですが、市内の総合病院から「医療連携していただけませんか?」という連絡がきました。本当にありがたいお話です。
その病院の場合、電話でもOK。
紹介状の場合も、病院所定のデータをいただけてそれをFAXかメール。
その紹介状には、私が習った紹介状マナーを使う余地などない、スマートなものです。
しかもFAXの場合はFAX送信票の必要もなく、紹介状だけ送ってくれと。
要するにコストカットです。
マナーのためだけに紙1枚使うのって、お互い無駄ですからね。

ですが、どうしてもその病院以外に紹介しないといけない場合は、こんな私でも今でもちゃんと書いています。

ただ、まさか医師への依頼状や紹介状だけの内容ででお金取ってセミナーってわけにもいかないですよね。
だって、1回知ってしまえば誰でも使えるものですし、そもそも、大した内容でもないことは書き方を知ってる柔道整復師なら誰でもわかっているはずなので、書き方セミナーなども存在しないのではないでしょうか。

ですので、このブログで医師への依頼状・紹介状の書き方の基礎を紹介させていただければと思います。

 

INDEX

封筒の書き方

ほとんどの場合が、依頼状・紹介状を患者さんに手渡して「これを病院で渡してね」というパターンだと思います。
となるので、宛名を書けりゃいいのですが、ここにも書き方が存在します。

要するに、病院名と医師の名前を書くわけですが、医師の名前の後に付けるものが特殊、というかまあ手紙のやりとり自体が普通ではない現代ではあまりお目にかかる機会がない単語です。

依頼状・紹介状に使うものだけを紹介させていただきます。

 

・侍史

「じし」と読みます。
たまに「待史」と間違っていることがありますが、「待」ではなく「侍」なのでお気を付けください。
侍史とは、偉い人につく従者、秘書的な人のことです。

お手紙の宛名の最後につけることで、

「直接お渡しなんてことはとても畏れ多いので、侍史の方を通してお渡しします」
「あなた様が直接お読みになるなんてことはとても畏れ多いので、侍史の方から『私から手紙がきてましたよ』ということが伝わればもう十分です」という意味になります。

もちろん、封筒にこれを書いたからと言って実際に秘書しか見ないなんてことはないのでご安心を。

 

・机下

「きか」と読みます。
意味は「机の下」という意味です。笑

「バカにすんな!」と言われそうなのですが本当なんです。
これを付けることで、

「あなた様に直接お渡しするなんて畏れ多いことなどできませんし、机の上に置くほど価値のあるものでもございませんので、せめて机の下に置かせていただきます」

という意味になります。

もちろん、封筒にこれを書いたからと言って、医師の机の下に置かれることはありません。
もしそんなことしたら医師の机の下は手紙であふれかえってしまいます。

 

※「御」をつけるかどうか

「御侍史」とか「御机下」とするかどうか、というところも迷うところです。
実は一般的、そして日本語的には「御」はつけないほうが正しいんです。

私の名前を例とします。

松村 正隆 様

のあとに「御侍史」とか「御机下」とつけるということになります。

そうすると、「様」と「御」で敬語を二重に使っていることになってしまうのです。
もう少しひねくれた指摘をしますと

「侍史や机の下を尊敬してんのか?」

ということにもなりかねません。
なので、一般的には「御」はつけずに

松村 正隆 様 侍史

というような形になります。

 

が!!!!!!!!!!

 

これが通用しないのが医療業界。
できるだけ遜って、二重でも三重でもいいから尊敬してます〜というスタイルにするのが常識なので、

松村 正隆 先生 御侍史

でもOKということになります。
これ、依頼状・紹介状のとき「だけ」のマナーですので、間違っても全然違う業界の目上の人に手紙を出す機会があったときに使っちゃだめですよ。

「こいつ、マナー全然知らんな」

って思われちゃいますから。

 

封筒の宛名の書き方

上記全てをクリアした宛名の書き方は・・・

 

〇〇病院 整形外科
〇〇 〇〇先生 御侍史(御机下)

 

となります。
「侍史」と「机下」はどちらでも構いません。
しかし、以前医療関係の会社の営業の方に「業者のほとんどは御侍史って書いてます」と教えていただいてから、私はあえて「御机下」を使うようにしております。

 

※御中は使っちゃダメ!

ありがちな間違いは、病院名のあとに「御中」をつけてしまうもの。
御中の意味は「その中の人」という意味ですので、〇〇病院御中にしてしまうと、「〇〇病院の人なら誰でも見ていいよ」ってことになりますので、使わないようにしてください。(依頼状・紹介状に限る)

 

 

封筒にもうひとつ書くこと

実は封筒に書くのは宛名だけではありません。
封筒の左下に

〇〇 〇〇(患者氏名)様 病用

と書いておきましょう。
患者氏名の後の「様」は「殿」でも「氏」でも構いません。

封筒はこれでOKです。
あ、紹介状や依頼状を作成することも考えて、院の屋号等が入った封筒を作成しておいたほうがいいと思います。

 

 

依頼状・紹介状の書き方

さてさて今度は中身です。
最近はPCがあるので、ExcelやWordでテンプレートを作成しておくといいと思います。

一番上は

「施術情報提供書」「紹介状」「依頼状」等を書いておきます。

その次に宛名をもう一度。
その次は患者氏名、住所、性別、生年月日を入力する欄。

その下が所見欄。

作成年月日

自院住所、屋号、氏名

となります。
ね、簡単でしょ。

ちょっと形にしてみますね。

 

紹介状

〇〇整形外科
〇〇 〇〇先生 御侍史(机下、侍史は封筒と揃えましょう)

患者 〇〇 〇〇様(男・㊛)←性別は〇が付けられるようにしておくと便利かも。
生年月日 年号〇年〇月〇日(〇〇歳)
住所 西宮市〇〇町1-1
電話 0798-11-1111

所見

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ご高診のほど、よろしくお願い致します。

 

年号〇年〇月〇日

〇〇整骨院 柔道整復師 〇〇 〇〇
住所:西宮市〇〇町1-2
電話・FAX0798-11-1111

 

という形になります。

 

所見の書き方

「問題は所見の書き方やねん!」という先生が多いと思います。
所見、アホがバレたらどないしよ・・・とか思っちゃいますよね?(私はむっちゃ思っていました)

で、頑張って英語使ったりしたこともありますが、面倒になって(英語大嫌いなので)日本語で統一したのですが医師の反応は変わりませんでした。

下手に英語使って間違うくらいなら日本語で良いと思います。
知り合いの医師も「英語でも日本語でも正しい情報もらえればOK!」って言ってましたし。

なので、主訴もわざわざCCとかにしなくてもいいです。

「主訴:足首の痛み」でいいんです。
ちなみに、圧痛という意味のtenderness。
実は柔軟性という意味もありますし、英語圏の医療業界ではちょっと触っただけでも痛いということで「敏感」という意味にもなるようです。

というか、例えば

外果前下方tenderness(+)

なんて使い方します?

英語なら英語で

tenderness in the 〜〜部位名(もちろん英語)〜

となります。
それに、限局性圧痛の場合はlocalized tendernessなんていちいち書くんかいな?って話です。

「俺は整形に勤務してて、整形でのカルテの書き方に慣れてるねん!」

という先生なら別に英語使っても構いませんが、英語を使って、整形外科のカルテの書き方を真似たからと言って医師が柔道整復師を信頼するということはありません。
大切なことは、伝える中身なんですから。

外傷の際の所見の書き方は・・・

・受傷機転
・症状や検査結果
・経過報告
・既往症

くらいでしょう。

可動域もわざわざ英語で書かないでいいですよ。
知覚検査もわざわざsnensory normalとか書かなくて大丈夫。
握力も握力〇kgで大丈夫です。
日本語でOKです。

問題はしないといけない検査をしていないことのほうです。
ただ、「うちの手に負えないからお願い診て治療もしてね」って場合の書き方もありますのでそれは後ほど書かせていただきます。

医師が欲しいのは患者情報であるわけですし、もし骨折や脱臼なら依頼状・紹介状の用語の使い方よりも、処置の方法を見て信頼できるかどうか判断されると思いますので。

なので、

〇〇部に圧痛有り。
自発痛、腫脹有り。
可動域〇〇屈曲〇度、伸展〇度

みたいな感じでもいいんです。
エコーをお持ちなら、どこが低エコーなのかなどの所見を日本語で書けばいいと思います。
(印刷したものを添えておいてもいいです)

 

【重要】所見で絶対に書いてはいけないこと

別に英語は使わなくても大丈夫ですが、絶対に書いてはいけないことというのが存在します。

それは・・・

 

「傷病名」

 

です!

理由は2つ。

理由①失礼に値するから

依頼状・紹介状に「ご高診のほど、よろしくお願い致します」と書いております。
「ご高診」とは要するに診察診断してねってことですよね。

例えば冒頭に

「〇〇骨折の疑い」

なんて書いてしまっていたらもう「ご高診」もクソもないですよね。
お前が診断しちゃってるやないかいってことになります。
散々、「御侍史」や「御机下」なんて遜って、尊敬しまくってるのに失礼千万なことをしちゃうということになります。

 

理由②診断権は医師にある

この理由のほうが大きいです。
これは今エコー検査でも問題になっていますよね。
我々柔道整復師には診断権はないんです。

もし無資格の整体屋さんが「捻挫も肉離れも診ます〜」なんて言ってたらどう思いますか?
ムカつくでしょ?
外傷を業としていいのは医師か柔道整復師だけや!って。

それと同じです。
診断権は医師しかないわけですから、医師も同じようにキレてもおかしくありませんし、実際法的なことがあるのでヤバいです。(まあ処罰されるようなことはないですが、気分を害する医師は少なからず存在すると思います)

エコーも、画像を見て柔道整復師が一人で納得するのはOKなのですが、その画像を患者さんに見せて「〇〇骨の骨折ですね」と言っちゃうと「診断」になると整形外科医が問題提起してます。

もう何度も患者さんを紹介していて、信頼関係ができている医師なら問題はないかもしれませんが、それでも文書として残るので法を遵守した内容にしておいたほうがいいと思います。

うちは医療連携をしていただいている総合病院以外に、個人の内科の医院とも連携しております。
その医師は、私の祖父が医師で西宮市医師会の理事か何かをやっていた頃に開業された先生で(その先生もすでに80歳ですが)、うちの祖父にとてもお世話になったらしく、依頼の際電話一本で引き受けていただけます。(その際、毎回祖父にお世話になったエピソードもしゃべられるのですが 笑)

痛風発作の疑いのある患者さんを主にお願いするのですが

「すみません、足首痛いってうちに来られた患者さんなんですけど、どうも痛風発作っぽいんでお願いできますか?」

って言っちゃってます。
しかし、それは信頼関係があるからやっているだけで、他の医師には絶対にしません、そんなこと。
ただ、このときも患者さんには「痛風発作です」とは言いません、絶対に。
診断になっちゃうので。

「もしかしたら、内科的な原因かもしれないから、内科紹介するから一度検査受けてくださいね」って感じのことを伝えるにとどめています。

整形外科医の中には我々柔道整復師を「これでもか!」というほどに敵視している先生もいます。
もしそうと知らずに、そんな先生のところに傷病名を書いた依頼状・紹介状を渡してしまったら・・・

怖いですよね。

なので、絶対に傷病名は書かないでください。

 

※手に負えない場合の書き方

できれば患者さんを返して欲しい、という場合は「ご高診のほど、よろしくお願い致します」で終わります。
(返してくれるかどうかは医師の判断ですが)

全然手に負えないから病院で治療してっていう場合は

「ご高診、ご処置のほど、よろしくお願い致します」

と「ご処置」を足します。
こうすることで、全て面倒みていただけるでしょう。

 

まとめ

依頼状・紹介状を書く際は、医療業界独特のマナーさえ知っていれば、あとは自身の医学的知識を用いて所見をかけばそれでOKです。

その際、傷病名だけは書くなよ、というだけです。

私が開業してから今までに紹介状を書いたのは・・・

・鎖骨骨折2件→整復後対診依頼
返信のお手紙と同意書を患者さんにお預けになり当院で治療継続

・コーレス骨折2件→整復後対診依頼
返信のお手紙と同意書を患者さんにお預けになり当院で治療継続

・外果骨折2件→対診依頼
返信のお手紙を患者さんにお預けになり当院で治療継続

上記は信頼できる整形外科に紹介したときの結果です。
次に、どうしてもその整形外科が遠いということで、仕方なしに柔整大嫌いで有名な整形外科に送った際の結果です。

 

・手舟状骨骨折→対診依頼
整骨院には二度と行くなと患者に伝える。

・肘関節脱臼→整復後対診依頼
整骨院には二度と行くなと患者に伝える。

・肩関節脱臼3件→整復後対診依頼
整骨院には二度と行くなと患者に伝える。

 

いや〜、面白いほど同じ結果でした。
ちなみに、どの患者さんもその医師に怒ってうちの院に通い続けました。
紹介状は英語使った整形カルテっぽいバージョン、日本語バリバリバージョンとまぜこぜで色々実験しましたが、結果はそれに依存しませんでした。

返してくれる整形外科医は英語でも日本語でも処置さえまともなら返していただけましたし、駄目なところは何しても駄目でした。(もちろん返信もありませんでした)

 

先述したように、紹介状・依頼状の書き方って、セミナーがあるわけでもない(と思う)ですし、開業してしまったらなかなか知る機会も少ないと思いますので、ぜひ参考にしていただければと思います。

投稿者: 正隆松村