やっぱり保険は最低限。

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さて本題です。

「保険は最低限の治療やで」

 

この言葉、実は私が言い出したわけではないんです。

言ってないどころか、最初私は反論してたくらいです。

私が最初にこの言葉を聞いたのは、ある歯科医師から。

別に怒るでもなく、ただ、ため息を出すように、

 

「まっちゃん、保険治療って、最低限の治療やで」

 

と言われました。

私は反発しました。
修業時代から、

 

「柔道整復師は保険を扱えるほど社会的に認められた資格なんや」

 

と教え込まれていた私からすると、保険が最低限ということを認めるのは、アイデンティティが崩れかねないほどのことです。
到底、認められるものではありませんでした。

また、柔道整復師が療養費を扱える(厳密には受領委任払いですが、面倒なのでこう表現してます)ようになった、先人の柔道整復師達の想いなどを考えると、

 

「はぁ〜?保険が最低限?確かに限られてはいるけど、その限られた中で最高のことするのも美学のひとつやろ!」

 

くらいの反論をしたと思います。

その歯科医師は一言、

 

「まっちゃん、感情論はええねん。」

 

はい終了、です。笑

確かに究極の感情論を口走っておりました。

 

「まっちゃん、一度、ちゃんと制度というものを調べてみ?愕然とするから。」

 

そう言われました。

参考に歯科の保険治療と自費治療の例を紹介させていただきます。

歯科の保険診療の例
レジン充填(じゅうてん):
プラスチックの白い詰めものを、う蝕(虫歯)を削ってその場で詰める方法。

金銀パラジウム合金・銀合金インレーまたは冠(クラウン):
銀色をした金属の詰めものや被せもの。丈夫で長持ちするが、変色したり、金属アレルギーの原因となることがある。

インレー:
う蝕<虫歯>を大きく削った部分の型をとり、後日詰めものを詰める方法

冠(クラウン):
被せもの

硬質レジン前装冠:
内側は金属で、外から見える部分にプラスチックを貼りつけた被せもの。前歯のみ保険適用。白くて歯に近い色だが、黄色く変色しやすく、プラーク(歯垢)がつきやすい。

レジン床義歯(入れ歯):
義歯床がプラスチックでできた入れ歯。強度を保つため厚みがある。

 

歯科の自費診療の例
セラミックインレーまたは冠:
セラミックの詰めものや被せもの。金属製のものに比べると耐久性がやや劣るが、自然な歯に近い色で変色が少ない。

ハイブリッドセラミックインレーまたは冠:
プラスチックにセラミックを混ぜた詰めものや被せもの。見た目は自然だが、セラミックに比べると変色しやすい。

金合金・白金加金インレーまたは冠:
金属の詰めものや被せもの。見た目は目立つが、抗菌作用があり長持ちする。

メタルボンド冠:
内側は金属で、外から見える部分はセラミックを貼りつけた被せもの。丈夫で変色しにくく、プラーク(歯垢)がつきにくい。

ラミネートベニア:
歯の表面を薄く削り、セラミックでできた薄い板を貼りつける方法。短期間で白くなり、時間がたっても白さが持続する。

バルプラスト義歯:
金属のバネがない入れ歯で、入れ歯であることが他の人から分かりにくい。

ホワイトニング:
薬剤を使って歯を白くする方法で、歯科医院で行う「ホームホワイトニング」と、自宅で行う「ホームホワイトニング」がある。希望どおりの白さにならないこともある。

歯列矯正:
矯正器具を用いて歯並びを整える。口唇口蓋裂<こうしんこうがいれつ>や顎(あご)の外科手術を伴う場合などは保険が適用される。

インプラント:
失った歯の代わりに人工の歯根をあごの骨に埋め込む方法。腫瘍やけがなどで広範囲にわたってあごの骨を失った場合などは、保険が適用される。

(参考:歯の治療はどこまで健康保険が適用されるの?[協会けんぽサイト])

 

おわかりいただけるであろうか?

虫歯で痛くて噛めないなら、金属でもなんでもいいから処置して詰めりゃ噛めるでしょってのが保険診療範囲と言えなくもありません。
歯が無くなったら、とりあえずプラスチックので構わないから入れ歯入れときって感じです。
見た目や歯並び、強度を求めるなら、口唇口蓋裂や腫瘍などによるものでない限りは自費診療です。

そう、まさに「噛めりゃいい」というのが保険範囲であると言えます。

 

では、柔整を見てみましょう。
まずは療養費の算定を。

柔整療養費算定基準↓

初検、往療及び再検

初検料 1,335円
初検時相談支援料 50円
往療料 1,860円
再検料 295円

 

骨折整復料

鎖骨 4,100円
肋骨 4,100円
上腕骨 9,000円
前腕骨 9,000円
大腿骨 9,000円
下腿骨 9,000円
手根骨 、 足 根 骨 4,100円
中手骨、中足骨、指(手・足)骨 4,100円

 

骨折後療法

630円


1.関節骨折又は脱臼骨折は、骨折の部に準ずる。
2.医師により後療を依頼された場合で、拘縮が2関節以上に及ぶ場合の後療料は850円とする。

 

不全骨折固定料

鎖 骨、胸骨、肋骨3,000円
骨盤7,200円
上腕骨、前腕骨5,500円
大腿骨7,200円
下腿骨5,500円
膝蓋骨5,500円
手根骨、足根骨、中手骨、中足骨、指(手・足)骨2,800円

後療法

530円

注 医師により後療を依頼された場合で、拘縮が2関節以上に及ぶ場合の後療料は750円とする。

 

脱臼整復料

顎関節1,800円
肩関節6,200円
肘関節2,800円
股関節7,000円
膝関節2,800円
手関節、足関節、指(手・足)関節2,800円

後療法

530円

注 脱臼の際、不全骨折を伴った場合は、脱臼の部に準ずる。

 

打撲及び捻挫施療料

打撲760円
捻挫760円

後療法

505円


1.不全脱臼は、捻挫の分に準ずる。
2.施術料は、次に掲げる部位を単位として算定する。

(打撲の部分)
頭部、顔面部、頸部、胸部、背部(肩部を含む)、上腕部、肘部、前腕
部、手根・中手部、指部、腰殿部、大腿部、膝部、下腿部、足根・中足
部、趾部

(捻挫の部分)
頸部、肩関節、肘関節、手関節、中手指・指関節、腰部、股関節、膝関
節、足関節、中足趾・趾関節

 

冷罨法料

80円

 

温罨法料

75円

 

電療料

30円

(参考:【参考資料】①柔道整復に係る療養費の概要(25改定請求件数リニュー版)[厚生労働省])

 

これが療養費ですね。
次に、労災を見てみましょう。

面倒なので一部だけ。

労災保険柔道整復師施術料金算定基準↓

初検料、再検料等

初検料2,485円
初検時相談支援料100円
往療料2,230円
再検料375円
指導管理料680円
休業証明書2,000円
運動療法料360円
施術情報提供料1,000円
電気光線療法料550円
宿泊料1,400円
食事料470円

当別措置料金(回数制限有)

・骨折、不全骨折又は脱臼
特別材料費1,620円
包帯交換料720円

・捻挫・打撲
特別材料費970円
包帯交換料360円

 

骨折整復(固定・施療)料

鎖骨 6,240円
肋骨 6,240円
上腕骨 13,800円
前腕骨 13,800円
大腿骨 13,800円
下腿骨 13,800円
手根骨、足根骨6,240円
中手骨、中足骨、指(手・足)骨6,240円

後療法
970円


1.関節骨折又は脱臼骨折は、骨折の部に準ずる。
2.関節近接部位の骨折により生じた拘縮が2関節以上に及ぶ場合で、かつ、一定期間(3週間)経過した場合の料金は、算定部位を変更せず一括して1,310円とする。

(参考:労災保険柔道整復師施術料金算定基準[厚生労働省])

 

 

値段は間違ってたらすみません。
ただ、値段は論点ではないのでいちいち調べていませんのであしからず。

 

厚労省の資料を参考にしましたが、骨折、脱臼のところに「整復料」と記載はありますが、労災のように「整復料(固定・施療料)」と記載がないのも引っかかりますね。
まあ固定料も含めている、と楽天的思考でいきましょう。

療養費の捻挫の算定基準、「固定料」が存在しないんですよね。
施療料に含まれるなら、本来だと労災のように「整復料(固定・施療料)」と明記されてもいいと思うんです。

不全骨折なら「固定料」と明記されています。
療養費算定基準でも、「整復料」が固定・施療料のことだとしても、捻挫は「施療料」としか書かれていません。

労災のように材料費や包帯交換料の算定も存在しません。

 

そう、もし保険なら・・・

 

足首ゴキッってなって、靱帯ブチッて切れても固定は算定されないんですよね。

ギプス固定なんて、自費中の自費、ですよね。
外傷セミナー系の講師も、このあたりしっかり勉強しておられる講師ならちゃんと材料費や固定費取れよって言ってるはずです。

 

これのどこが「最低限じゃないねん」って話なんですよ。

 

「外傷の人には、療養費で最高の施術を!」

 

なんてやったら、下手すると破産ですよ。
療養費のために、レセコンのリース契約して、個人請求なら毎月封筒いっぱい用意して、郵送料支払って、団体所属なら手数料支払って、会費支払って、その上、アルフェンスやプライトン、キャストの材料費いただかないとなると、患者さんが通えば通うほど経営が行き詰まってきますよね。

 

実際、少し前に保険依存柔整師がワイワイと騒いでいた領収証問題。
「材料費ならいける」とか言ってませんでしたっけ?

もしいけるとしたら、捻挫や打撲において、固定的なことをするのは療養費基準範囲外だから、お金取っていいし、それを領収証切ってもいいよってことですよね?

 

自分が今まで信じて(盲信して)きたこと、柔道整復師の歴史などを考えると、我々世代くらいまでの柔道整復師は「保険治療が最低限」ということを認めるのは、感情が拒否しがちなんですよね、過去の私のように。

価値観は、自身の過去の経験から構築されるものですので、過去に保険でガンガンやっていたとか、そういうところで修業していたというような柔道整復師の先生ほど、「保険は最低限」ということを認められないのではないか、そう思います、過去の私のように。

骨折すりゃ、とりあえず整復して固定しなけりゃ生活できません。
しかし捻挫なら、別に固定せずとも生活はできます。
足ひきずってでも。

保険範囲だけを守って、一切の実費的な料金を患者さんからいただかないでやっていくと仮定した場合、患者さんが捻挫で受診したならば、電気はOK、冷、温もOK、後療も約500円の範囲内でOKですが、そこに固定の技術料や材料費は含まれないので、無償提供ということになるのです。

 

これのどこが最低限じゃないのでしょうか?

面白い例もあります。

実は私は、自費に変えて成功した頃はまだ兵庫県柔道整復師会に所属していました。いわゆる社団というヤツです。

当時執行部員として、仕事があるときは会館まで行ってお仕事をしていました。
当時の副会長と話をして、今のアカデミーのようなことを社団内でやらせてほしいと提案したのです。

理由は簡単です。
定率会費は今後落ちる一方。
それに依存した社団経営は、間違いなく崖っぷちです。

それなら、定額会費を値上げするかわりに、自費でも大丈夫な経営方法を教える。
社団としては、公的団体の立場から「外傷以外は保険効かないよ〜、肩こりとか腰痛とか保険扱ってる整骨院不正でっせ〜」と広報していく。
公益社団取ってるんだから、そういう広報費は公益性もあるから予算出しやすいはず。

そうなれば社団外の柔整師は戦々恐々。
そこに「社団では自費で成功する方法教えまっせ」って言えば会員は集まる、という作戦です。
しかも、今やっているマーケティング講座や問診講座も、公益社団で開催して、社団会員は安価に、非会員は高額でって感じにしておけば、講座の収入もあり、会員数もまた増えるということが見込まれるわけです。

だから、それを提案したんです。

 

「松村先生は腕があったから、自費で成功したんやん。そんなん、今の会員の先生のほとんどがアカンで」

 

と即却下。

これ、当時の副会長の発言ですよ。
自身が副会長を務める会の会員のほとんどの腕がないと発言しているわけですよね。

しかも、副会長の論調では

腕が良い→自費
下手→保険

という解釈なわけです。

「保険は最低限だから、下手でもお金いただける」

という解釈も成立しうる、ということになります。

 

もちろん、柔道整復師のプライドを持って外傷を保険で診つつ、足りないものだけを自費で補うという外傷治療をされている先生もたくさんおられることは、私もわかっています。

 

実は、私が価値観を比較的簡単にシフトできたのには理由があります。

それは、自費の世界を知ったから。
その世界で結果を出し、そしてアカデミーを立ち上げ、その会員がどんどんこっちの世界に入り、価値観をシフトさせていったのを知ってるから、なんです。

 

もし今回の記事で、感情的に「保険は最低限」という語句に拒否反応が出たのなら、まずは自費の世界を知ってください。私のようにそこにドップリ浸かってください。あなたの手で、患者さんを治し、自費料金をいただくという、他に雑音が介入しようのないこの世界に入ってきてください。

その後、あなたの論理がどう変化するか、それを私は知りたいと思います。

 

 

 

 

投稿者: 正隆松村